医師の時間外労働は過労死ライン超え!300時間働いても労基法違反にならないトリックとは…【医療界の実態告発】

労働基準法では、労働者を守るためにいくつかの規定がありますが、医師の罰則付き時間外労働の上限規制は5年間猶予されました。

医師の労働時間はどれくらい?

先月(3月)の主人の労働拘束時間の概算は287時間でした。
先月は年度末で消失してしまう有給を1日無理やりとったので、少しマシですが、有給をとらなかったら一月の労働時間は約300時間で、けっこうしんどいけれど同じような医師はゴロゴロ居るレベルかと思います。
勤務病院以外の当直も断っているので、タイムカードも勤務時間記載表も(残業代も)ない研修医時代や大学勤務の時期と比べればかなり労働時間は減りました。

労働拘束時間のだいたいの内訳は


時間日間合計時間
平日勤務11 21 231
平日当直13226
休日当直24 124
待機 2 3 6
合計

287
食事時間は平日の21日間で平均20分として計算し、実労働時間を7時間減らすと、1ヶ月の労働時間は280時間となりました。

過労死ラインは時間外労働80時間/月

医師は、社会的常識もなく、やる気、上司からの圧力、医局制度による拘束などにより、搾取される立場にあります。
先月の労働時間から、176時間(平日22日間×8時間)を引くと残業104時間です。

1日8時間、週5日労働を基準として、時間外・休日労働が月に100時間を超えるか、又は2~6ヶ月間の平均で80時間を超える一般のサラリーマンの過労死ラインですが、軽くラインオーバーしてます。

労働基準法は尊守されてる?医師の勤務実態は…

さて、これを労働基準法に当てはめて妥当かどうか見ていきましょう。

労働時間の原則

使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはならない。 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

さて、実態を見てみると、4日勤務すれば40時間を超えてしまいますが、契約時点では全く超えません。それは、実際とは異なり、契約労働時間前のサービス回診、サービスカンファが存在するためで、契約時間外に有志で集まってカンファレンスしたり患者の状態を集まって見に行ったりしているのだからその時間にお金は払えません!ということです。 たとえその時間に患者さんの治療方法を決めていても、傷の交換などの業務を行っていたとしても無給です。
しかしながら、外来診療開始時間が契約での勤務開始時間だとすれば、病棟に入院中の患者さんはいつ診に行ったらいいのでしょうか。午前中に退院希望されていても外来が終わる夕方ですか…?

休憩時間

使用者は、労働時間が8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
※作業間の待機時間(「手待ち時間」)は、労働時間の一部であって、休憩時間ではありません。

契約では 1時間も食事休憩があるかのように書かれていますが、多忙な病院の外科系医師の食事時間なんか10分あればいいほうです。人気外来を持つ内科の先生も食事時間は少ないと思います。
手術が終わって次の手術の患者さんが手術室に到着するまでの10分や、救急車が到着するまでの数分のお弁当休憩は、厳密には次の作業までの「手待ち時間」なので、休憩時間ではありません
食事の時間になったら手術をやめて休憩したらいいんですか?ありえないですよね?

これは医師のやる気(同情心)の搾取です。

休日

使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。
※ 4週間を通じ4日以上の休日を与えてもOK

これは待機と云う名の傷の交換出勤日を考慮しなければ1ヶ月に4日間は休みがありました。
各病棟をまわり、傷の処置や休日退院患者への対応をし、(毎日処置が必要な患者さんの裏外来をこっそりして)、金曜日の夕方に渡された「月曜日までが締め切りです」と付箋が張ってある書類を記入し…すぐ2時間位経過します。ほぼ無給で。
毎月レセプト回ってくるの遅すぎなんです。これは事務の能力不足か人員不足のためです。
締め切りギリギリに書類渡すんなら、こっそり置かずにアタマ下げんかい!
なんで毎月、休日に事務のケツ拭きせなあかんねん!
あー書いてスッキリ!

時間外および休日の労働と限度時間(36条:いわゆる36協定)

使用者は、労使協定を締結し、これを行政官庁(労働基準監督署)に届け出た場合においては、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

この協定の締結・届出なしに法定時間外労働や休日労働をさせることはできないため締結しているものと思われます。残業時間と残業代のとりきめです。
一般の労働者の場合の時間外労働の限度に関する基準は↓
期 間限度時間
1週間15時間
2週間27時間
4週間43時間
1カ月 45時間
2カ月81時間
3カ月120時間
1年間360時間
ただし、「特別条項付き36協定」を結んだ場合、ほぼ制限のない「青天井」の時間外勤務協定を結ぶことが可能です↓
通常の生産量を大幅に超える受注が集中し、特に納期がひっ迫したときは、労使の協議を経て、6回を限度とし、1か月60時間、年420時間までこれを延長することができる。
出典:時間外労働の限度に関する基準

時間外、休日および深夜労働の割増賃金(37条)

使用者が、法定時間外労働、休日労働、深夜労働をさせた場合は、次のとおり割増賃金を支払わなければならない。
(1) 法定時間外労働 25%増  
(2) 休日労働 35%増
(3) 深夜労働 25%増
※ 改正労働基準法により、1か月の法定時間外労働が60時間を超える場合は、その超える部分については、時間外労働の割増賃金は、50%増
 岡山労働局【時間外・休日・深夜労働の割増賃金】

地域のメインの病院での当直は寝当直ではありません。ほぼ不眠不休で朝を迎えることが多いです。救急以外にも病棟でのトラブルなどで呼び出されます。
時間外かつ深夜労働ですが看護師さん達の夜勤とは異なり、当直代は一括で決まっており、その日は手術が長引こうが超過勤務手当も付けられないので、時給は夕方から翌朝までコンビニバイトしたのと同じくらい。
しかも、次の日も外来や手術などの業務が入っているので36時間位働きっぱなしです。
今勤務の病院は当直翌日は半日休みというルールがあるので、半日分の代休が与えられますが、その有効期限は2週間で使わずに消失していきます。次の日も自分の外来や予定手術も入っているのでとったことないし、とれる状況でも無いです。報われませんね。

年次有給休暇

使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。

さて、有給がもらえることと、有給が消化できることは同義ではありません
消化しなかった有給は消滅していきます。
しかし、 今の病院では公務員に準じている為、有給を5日消化していないと会社(病院)自体が指導の対象になるらしく、主人は年度末までにあと1日とらなければならず、週の真ん中の、業務への影響が少ない日に無理やり取らされました。
残りの有給は買い取りはなく消滅していきました…繰越されるものもありますがおそらく使わないでしょう。
たまに退職時に使い果たす医師も居ますが、代わりの医師が来るまで、患者さんや元同僚の医師は大変な目にあいます。人手不足で業務が回らないんです(経験アリ)

労働基準法の労働時間に違反している?

先月の労働時間が労基法違反かどうか、もう一度表を見ながら確認。

時間日間合計時間
平日勤務11 21 231
平日当直13226
休日当直24 124
待機 2 3 6
合計

287
実際の拘束時間は287時間。
昼ごはんの時間が平均20分取れたとして、実労働拘束時間280時間

8:30~17:30(休憩1時間)の契約だと、 拘束時間8時間(労働時間は7時間+休憩1時間)のため、休憩を含めない労働時間は7時間×22日=154時間のハズ。
これを引き算すると、時間外労働は126時間となる。

しかし、労働基準法施行規則第23条によれば、当直や待機は不眠不休でも、今のところ時間外労働とみなされていない。
使用者は、宿直又は日直の勤務で断続的な業務について、様式第十号によつて、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、法第32条 の規定にかかわらず、使用することができる。
当直時間(計50時間)と待機時間(計6時間)を除くと70時間
実労働はあるものの、勤務時間とカウントされない朝の30分を除くと59.5時間

協定次第では残業時間は年6回までは60時間を超えることが可能なので、書類上セーフですね。

労基法をスリ抜けるトリック

でも毎月コレだと確実にアウトなのでは…?と思いますよね。しかし、違反しないように、医療界では労基法をすり抜けるトリックが仕掛けられています。
それは、外勤です。
給与のために選んでやっているわけではなく人事に組み込まれ、命令されて主に契約している病院の系列病院や医局から指定された病院に一週間につき半日~1日行って外来診療や手術のお手伝いをします。
遠くの病院であろうが徒歩圏内の系列病院であろうが、経営が独立していれば、労基法では別カウントなので、各病院の勤務医を半日間交換すれば、病院単位で考えると、半日(≒4時間)を時間外労働から減らせます。

先月で計算すると、1週間に1回(半日)×4回=16時間。
これを引くと、主に契約している病院での時間外労働時間は43.5時間
1ヶ月の限度の45時間の範囲内に収まりました。
ちなみに、もっと忙しい月で、残業時間の上限時間までで収まらない場合は、事務から「収まるように書き換えてください」と、書類が突き返されます。これは違法ですが。
ややこしいので44時間くらいまでにして欲しいようです。
以前の病院の院内暗黙ルールは超過60時間まででした。カウントされず支払われなかった残業手当分は、翌月で調整するか、泣き寝入りですかね。

労働基準法改正?医師は労働者?

政府の「働き方改革実行計画」で医師の罰則付き時間外労働の上限規制は5年間猶予されました。日本医師会の会長は以下のコメントをして居られます。
「医師の雇用を労働基準法で規律することが妥当なのか。新たに設置される検討会でも日医が議論をリードしてきたい」「この度の議論で多くの患者や国民から『医師が労働者であることは違和感がある』と言葉をいただいた。正直申し上げて、私も『労働者』と言われると少し違和感がある。」
絶句ですね。
日本医師会というのは、開業医の集まりです。自営業、経営者、管理職です。雇う側の人間です。医者を時間外長時間働かせても処罰されない法案を通したい側の人間です。
あなた達は労働者ではないでしょう。

大多数の労働契約を結んでいる勤務医はどうころんでも「労働者」です。ブラック企業のサラリーマンです。医師の過労死もなかなか減りません。応召義務を振りかざして患者のために、不眠不休で働けというのなら、少なくとも対価が必要です。最低限、労働時間分の給料の支払いを

しかし、応召義務を振りかざし、医師は労働者ではない、給与が高いのだから何時間でも働け!という皆様は、24時間以上働き続けている医師に、手術、されたいんですかね?