切迫早産とウリナスタチン

切迫早産とウリナスタチンの効用はプロゲステロンよりも前から論議されている模様
しかし、論文出版日が古く、薬剤師の報告や地方誌などへの掲載が多い印象で、近年、産婦人科医が産婦人科のメジャーな雑誌に投稿していない様にも見える。
使用していないし、個人入手も出切なかったので、情報のみ。

切迫早産とウリナスタチン治療(ワタシ的まとめ)

  1. ウリナスタチン(ミラクリッド)は酵素阻害剤
  2. 膵炎の際に膵酵素を阻害するのに治療として用いる
  3. 早産の原因の絨毛膜羊膜炎(CAM)では、好中球エラスターゼ、インターロイキン(IL)が増え、頸管熟化が進む(子宮口が柔らかくなり、頸管が短縮する)
  4. ウリナスタチン(UTI)腟坐剤の抗炎症作用により、インターロイキンなどによる卵膜への攻撃が抑えられ、頸管熟化作用が抑制される(子宮頸管が短くなるのを防ぐ)。
 大雑把にまとめたので、御幣があったらすまんすまん。
陰部の不潔(失礼!洗いすぎとかも含めるので許して~)によって卵膜が細菌感染
→子宮収縮(お腹の張り)
→病院で抗生剤投与して菌を殺す(膣錠とか点滴とか飲み薬とか)
菌がいなくなっても子宮収縮おさまらず
ということが、まぁまぁの頻度であります。

花粉症とか、アトピー、アレルギーとかと似た感じで、病原体がなくなっても、混乱して、自分の免疫が自分の体を攻撃しちゃうようなことがあるんですよね。闘争心に火が点いて、敵も味方もとりあえず無差別空爆!みたいな。
で、免疫に働き過ぎだから、とりあえず落ち着いて! って言うクスリがウリナスタチン
でも、容量が多すぎると、本当に敵が来ても落ち着いてて胎児感染してたら困るし、どのくらいの容量がベストか実験するわけにもいかないので、切迫早産に関して認可外?なのかもしれません。
良くしってる人いたらコメントで補足お願い。力不足でごめんねごめんねー。

参考文献リスト

ウリナスタチン腟坐剤の赤十字病院での調製状況と使用実態調査
Author:佐竹 清(さいたま赤十字病院 薬剤部)
Source: 日本病院薬剤師会雑誌 (1341-8815)51巻7号 Page835-839(2015.07)

日本赤十字病院における切迫早産に対するUTI製剤の使用施設は、54施設中23施設(42.6%)。UTI腟坐剤が19施設、UTIタンポン製剤が4施設。UTI腟坐剤の処方内容をみると、主薬、規格単位、坐剤基剤などが各施設で異なり、調製量や処方人数、費用負担などにもばらつきがみられた。一方、さいたま赤十字病院でUTI腟坐剤が使用された患者は、88名中76名(86.4%)で、最終分娩が確認できた患者の68.7%が37週以降の正期産。
ただし、他剤(ウテメリンなどの併用の有無記載なし)


胎胞膨隆を伴う妊娠中期切迫早産例に対して経口ニフェジピンとウリナスタチン腟内投与で管理した1例
Author:首里 英治(母子愛育会総合母子保健センター愛育病院)
Source: 東京産科婦人科学会会誌 (2186-0599)63巻4号 Page654-657(2014.10)

副作用により塩酸リトドリンと硫酸マグネシウムの使用ができず、胎胞膨隆を伴う妊娠中期切迫早産症例に対して、経口ニフェジピンとウリナスタチン腟錠投与が有効であった症例を経験した。
35歳、初産。
妊娠20週より切迫流産と診断しリトドリン内服を開始し、妊娠23週の入院時よりウリナスタチン腟錠投与を併用。
リトドリンによる薬疹と使用変更した硫酸マグネシウムによる副作用。
妊娠26週より経口ニフェジピンを開始した。子宮収縮の増加に伴い胎胞膨隆を認めたが、ニフェジピンを増量し有効な子宮収縮抑制が得られ、妊娠34週まで妊娠継続が可能であった。本症例において経口ニフェジピンは副作用も少なく、有効な子宮収縮抑制効果が得られた。ウリナスタチン投与により卵膜の破綻を抑制した可能性もある。ともに未承認ではあるが、早産リスクの極めて高い胎胞膨隆切迫早産症例の在胎週数の延長に対して、治療の選択肢の1つとなる可能性が示された。


患者のQOL向上と薬剤師の関わり(PART I) 院内製剤 ウリナスタチン腟坐剤の調製と絨毛膜羊膜炎に伴う切迫早産に対する有用性
Author:稲葉 健二郎(相模更生病院 薬剤部)
Source: 医薬ジャーナル (0287-4741)50巻2号 Page833-837(2014.02)

主に重症例に対し、ウリナスタチン腟坐剤による局所治療を併用し、効果を上げている。総合相模更生病院でのウリナスタチン腟坐剤の使用状況と効果を確認したところ、投与群は非投与群と比較し有意に重症度が高いものの、ウリナスタチン腟坐剤を投与することで、重症度の低い症例と同様の臨床経過が得られていた。このことから、CAMに伴う切迫早産の治療には、従来の治療に加えウリナスタチン腟坐剤の併用が有用な手段であることが示唆された。


ウリナスタチン腟坐剤の使用状況と副作用調査
Author:坂本 達一郎(静岡県立総合病院 薬剤部)
Source: 静岡県立総合病院医学雑誌 (0911-4157)23巻1号 Page39-44(2011.03)

著者らの施設における2006年8月~2008年11月までのウリナスタチン腟坐剤の使用状況と副作用について報告した。その結果、1)ウリナスタチン腟坐剤は109例に処方され、うち94例が著者らの施設で出産していた。2)この94例のうち71例は入院後にウリナスタチン腟坐剤を開始され、23例は外来通院で使用していた。3)出産まで入院管理を必要とした46例のうち早産は26例、37週未満の前期破水(preterm PROM)は7例と早産の27%であり、一般的に言われているpreterm PROMの発生率30%と同程度であった。4)有害事象は8.25%(9/109例)、臨床検査値異常は12.4%(11/89例)に認められたが、いずれも軽微なものであった。以上より、ウリナスタチン腟坐剤の臨床効果とその安全性が確認された。


頚管粘液中IL-8測定からみたウリナスタチン膣錠の頚管熟化抑制効果
Author:河村 隆一(浜松医科大学周産母子センター産婦人科)
Source:日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(2) 174-174, 2005

切迫早産の主原因が絨毛羊膜炎などの炎症であることがわかるにつれTNF-α,IL-6,IL-8などの炎症性サイトカインが注目されるようになってきた.当科では切迫早産治療として子宮収縮抑制に加えウリナスタチン膣錠による頚管熟化抑制を行っている.
平成16年6月から平成17年2月までに当院で入院し切迫早産治療を行った8症例で塩酸リトドリンに加え,連日ウリナスタチン膣錠を腟洗浄時に挿入.IL-8の測定は膣分泌物を治療開始前の入院時と治療後2週間ごとに採取しIL-8測定キットを用いてELISAで測定.
入院治療を行った症例は8症例で平均入院週数は28.1±1.6週であった.入院時に採取した頚管粘液中IL-8の値を基準とし,治療開始後の推移を評価した.
治療開始後2週間では平均2.5%の低下,また分娩・退院前では平均5%の頚管粘液中IL-8低下を認めた.
対象の分娩結果は平均分娩週数が37.8±3.5週,出生体重は2732±354g,治療開始からの妊娠継続期間は平均9.3±2.2週であった.
ウリナスタチン膣錠により腟洗浄を行うことにより頚管分泌物のIL-8は低下する傾向を認めた.これは切迫早産時に頚管で多量に産生されるTNF-αやIL-6,IL-8などのサイトカインがウリナスタチン膣錠の抗炎症作用により抑制されたものと考えられる.切迫早産管理として子宮収縮抑制だけでなく頚管熟化抑制も重要な治療でありウリナスタチン膣錠は頚管熟化を抑制に有用であると考えられる.

おまけ

漢方を用いた珍しい?治療法も見つけたのでおまけ。


生殖医療と漢方 切迫早産に対する漢方薬治療と頸管粘液中IL-8に対する影響についての検討
Author:高田 杏奈(岩手医科大学 産婦人科学講座)
Source: 産婦人科漢方研究のあゆみ (0913-865X)31号 Page40-44(2014.04)

2011年に切迫早産で入院管理中の妊婦に対して柴苓湯を投与したところ、子宮頸管粘液中の顆粒球エラスターゼを抑制する可能性がみられ、かつ副作用を示さず安全に投与できる処方であることを示した。
2013年1~7月の間に妊娠22~34週に切迫早産の診断で入院となっ た妊婦を対象に、これらを柴苓湯エキス製剤(9g/日分3)を投与した10例(A群)と同時期に柴苓湯を一度も投与しなかった8例(B群)に分け、子宮収縮抑制薬とウリナスタチンの腟内投与を行った。そして、1週間ごとに子宮頸管粘液を採取し顆粒球エラスターゼを測定して両群間における2週間後の顆粒球エラスターゼおよび分娩数を比較検討した。その結果、1)両群間における母体年齢・入院時妊娠週数・入院時頸管長には有意差は認められなかったが、顆粒球エ ラスターゼが陰性化した妊婦はA群6例(60%)、B群3例(37.5%)であった。2)A群における頸管粘液中のIL-8減少症例は9例(90%)であり、投与前の平均測定値は20761.9pg/mlであったが、投与2週間後には3336.0pg/mlに低下し、低下率は29.0~94.6・平均 65.57%であった。以上、これらのことからも柴苓湯の投与は子宮内の炎症を抑制する可能性が考えられた。