野良猫や生肉のトキソプラズマ。オーシスト排出期間と殺菌方法。【公園遊び/妊婦】

妊娠中のトキソプラズマ感染に関して調べてみました。

先日、ファミサポの方が、「公園で猫の糞をふんじゃって、靴が臭くなってます~」と笑顔で子供を返却してきたのですが、子供によく聞いてみると、公園の野良猫と触れ合わせている模様。
知識の無さに、もう絶句です…。
野良猫って、妊婦にとって大敵なんですが…

妊娠中にネコはどうして危険なの?

動物のフンには、もちろん病原菌などが様々含まれていますが、特に、猫の糞には、トキソプラズマ原虫のオーシストという、胎児に異常をもたらす猛毒となるものが入っています。
人間も含めたほとんどすべての哺乳類と鳥類は、トキソプラズマに感染する可能性がありますが、トキソプラズマ原虫は筋肉内に寄生する場合がほとんどで、糞便やくしゃみでも、人から人へ感染したりはしません。
しかし、ネコ科動物に感染すると、腸管上皮内で、有性生殖し、ほぼ不死身のオーシストという形態に進化し、糞便中に排出されます。
猫の体から排出されたオーシストは1年以上感染力を持っています
そして、このオーシストが体内に入ってしまうと、トキソプラズマ感染を引き起こします。
免疫不全やガンなどで体が弱っていない健常者だと、感染しても、症状が出ず気付かなかったり、微熱やリンパ節が少し腫れる程度で、風邪と勘違いしてしまう程度です。
一方で、妊娠中に初めて感染すると、胎盤を通過して胎児に感染し、流産や早産、死産、胎児異常を引き起こすことがあり、先天性トキソプラズマ症と呼ばれます。
このため、「妊婦はネコに近づくな」と言われています。

どのネコが一番危険?!

猫に触れることがハイリスクだと分かりましたが、どのネコでもそのリスクは同じでしょうか?
飼い猫は?室内ネコは??
実は、猫の糞にオーシストが排出されるのは、感染して数日後から3~4週間程度です。
そして、オーシストが成熟して感染力を持つのは、糞便中に排出されてからに1~2日後です。

室内飼いの飼いネコからの感染リスクは?

飼い主の妊娠前に完全な室内飼いを1年以上続けているねこであれば、ほぼ安全です。
室内飼いのネコがトキソプラズマ原虫に感染していなければ、オーシストを排出しないので、ノーリスクです。
すでにネコが感染していても、世話をしている飼い主も感染していれば、妊娠中に初めて感染することにはならないので、リスクはありません。
飼いネコが感染していて、飼い主が感染していなくても、(脱出や庭を含め)室外に出したり他のネコと触れ合わせたりしていなければ、飼い猫がトキソプラズマ原虫に感染してオーシストを排出していたのは、少なくとも1年ほど前の話ですから、今はオーシストを排出していませんので(1年以上前の糞便を放置していない限り)ノーリスクです。

屋外飼いの飼い猫からの感染リスクは?

屋外に出している飼い猫は、他のネコと交流を持ったり、砂場など他のネコが糞をする所で、オーシストを身体につけて戻ってくることがあるため、その飼い猫が感染している、感染していないに関わらず、飼い主への感染リスクが常にあります

また、飼い猫がトキソプラズマ原虫に感染した場合糞便中のオーシストが感染力を持つ前(排泄後なるべくすぐ)に糞便の処理をしてしまえば、感染のリスクを下げることが出来ます。

野良猫、地域猫からの感染リスクは?

野良猫や地域猫は、そのほとんどが生まれてすぐに母猫からトキソプラズマ原虫に感染していると思われます。そのため、成猫のほとんどはオーシストを排出する時期をとっくに過ぎています。
しかし、糞をする砂場などで身体にオーシストをくっつけている可能性が高いので、妊娠中は、むやみに近づいたり撫でて触ったりしないほうが安全です。
そして、一番感染のリスクが高いのが、野良猫や地域猫の子猫とその世話をしている母猫です。ついつい触りたくなってしまう方もいるかもしれませんが、妊娠中は、自分の赤ちゃんのために、屋外の子猫には触れないようにしましょう。

ネコ以外に気をつけることは…?

トキソプラズマ原虫の人間への主な感染経路は、
  1. ネコ科の糞便中のオーシストが口に入る
  2. トキソプラズマに感染した肉のシストが口に入る
の2通りで、どちらも経口感染です。

そのため、
  • ネコの行動範囲に自分の庭が入っていれば、ガーデニングを避ける
  • 公園の砂場遊びを避ける 
  • 公園や屋外の花壇の花などに触れない
  • 猫の糞を踏まないように注意する
  • 動物園でネコ科の動物と触れ合わない
  • ネコ科のサファリツアーを避ける(かマスク着用&厳重な手洗い)
  • 生肉を食べない(クジラ肉も含む)
  • 生肉を扱った後の調理器具の洗浄や手洗いをおこたらない
  • 土で育つ野菜や果物はよく洗い、なるべく加熱する 
  • 湧き水や井戸水を加熱せずに飲まない
などの対策が必要です。

また、トキソプラズマは粘膜に接触しても感染することがあります。
  • 生肉を触る際には手袋をつける
  • 粘膜のある目や口を触らないようにする
  • 肉汁が飛び散らないように気をつける
などの対策もしておいたほうが良さそうです。

お肉はどうすれば安全に食べれるの?

胎児に栄養を送るためにも、貧血予防のためにも食べておきたいお肉。
安全に食べるためには、肉の中のシストが死ぬ温度にする、つまり、内部が-12度以下になるまで凍結するか、内部が67度になるまで加熱することが必要なようです。
業務用冷凍庫で冷凍されてから出回っているお肉は-20℃以下で冷凍されているので、安心して食べれますね。
冷凍されずに出回っている新鮮なお肉も、ピンク色が残らないようにしっかり加熱しましょう。

レタスなどの野菜は、よく洗っても心配なら、水耕栽培をじぶんでしたり、水耕栽培のものを買うこともオススメです。 妊娠中だけの我慢ですし、安全なものを口にできるので、気分的に楽です。

憎きオーシストを殺すには?!

ほぼ不死身のトキソプラズマオーシスト

トキソプラズマのシストは加熱や冷凍などで死滅させることが出来ますし、肉の中にしか居ません。
一方、オーシストは、猫の糞として体外に出た後、公園や砂地などで1年以上感染力を持ち続け、雨などで流れて広がります。
また、抗生剤にも強く、乾燥させても、次亜塩素酸(ハイターなど)や石鹸水、アルコール消毒をしても死にません。

自宅で出来る唯一の殺菌消毒方法は?

このほぼ不死身のオーシストを殺して感染力を無くすには、70℃以上に加熱することが重要です。
昔の教科書には70℃で10分と書いてありますが、最近の論文では、数分で死ぬようです。
捨てることが出来ず、加熱できる汚染物には熱湯をかけましょう。90℃以上の熱湯だと1分程度で死ぬようです。汚染物全体が必要な温度になるように気をつけて下さいね。
加熱できないものは、しっかり水で洗い流すしか無いです。
汚染物に触れた可能性のある手などは、爪の中までしっかり洗いましょう。
今回の記事は書籍と学生時代の講義ノートを参考にしております(少々内容が古いかもしれません)。